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つづき3
石女の蕣の花にうがひかな
行く我にとどまる汝に秋二つ
十一人一人になりて秋の暮
送られて一人行くなり秋の風
めでたさに石投げつけん夏小袖
宿帳や春の旅人異名書く
新年や鶯啼いてほととぎす
蒲團から首出せば年の明けて居る
手凍えてしばしば筆の落んとす
筆禿びて返り咲くべき花もなし
年玉を並べて置くや枕もと
三年目に蕾たのもし牡丹の芽
春深く腐りし蜜柑好みけり
山吹や何がさはって散りはじめ
雨ノ日ヤ皆倒レタル女郎花
美女立テリ秋海棠ノ如キカナ
病牀ノウメキニ和シテ秋ノ蝉
ツクヅクト我影見ルヤ虫ノ聲
草花ノ鉢並ベタル床屋カナ
朝顔ヤ繪ニカクウチニ萎レケリ
筍に木の芽をあえて祝ひかな
五月雨や善き硯石借り得たり
芍薬は散りて硯の埃かな
風板引け鉢植の花散る程に
初夢の何も見ずして明けにけり
莟太く開かぬを愛す福壽草
晝過や隣の雛を見に行かん
床の梅散りぬ奈良茶をもてなさん
もたれよる柱ぬくもる冬籠
晝門を鎖す殘暑の裸哉
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